アレルギーって何?
花粉症の対策をたてるためには、まずアレルギーについて知っておく必要があるでしょう。アレルギーはいわば過敏症で、もともと体にとって不必要なものを排除するしくみが過剰に働いてしまうためにおこります。
花粉症はスギなどの花粉に対するアレルギー症状の総称で、花粉が主に体の「粘膜」に触れることで起こるアレルギーです。「粘膜」は体の中でも湿っている部分で、「鼻の中」「まぶたの裏」「口の中」などがそうです。最も外気に触れやすいそれらの粘膜に花粉が取り付くと、過敏な粘膜は過剰反応を起こし赤くはれて粘液を分泌します。それが「鼻水」「鼻づまり」「目の充血」「目のかゆみ」「目ヤニ」などの症状になるのです。
その他にも口やのどの渇き、食欲低下や下痢などの消化器症状を起こす方も多く、これは口や胃、腸の粘膜に花粉が触れることによっておこると考えられ、さらには思考力の低下や倦怠感、発熱などの全身症状をひきおこすこともあります。私自身も花粉症で、いつも1月の終わりから2月の初めの頃、風邪をひいた時のような全身倦怠感と微熱が出ますが、それが花粉症の始まりの合図と心得ています。
予防はどうすればいいの?
花粉症の予防は、とにかく花粉と触れないようにすることです。なので、その時期だけ花粉の飛ばない北海道や海外に移住するのが一番です。びっくりするくらい症状がよくなります。でも、現実的ではありませんね。花粉と触れ合う機会があれば、必ず症状が出てしまいます。それを少しでも軽くする、という意味での、予防のお話をします。
初期治療を始めましょう
花粉症の症状が始まり、悪化してから治療を始めると、その分強い薬を使わなければいけませんし、良くなるまでには時間がかかります。最近では、花粉が飛び始める2週間ほど前から薬を使い始めるとシーズン中の症状が軽くすむことがわかっています。毎年症状のある方は、1月の半ば~終わりころの症状が出る前から点眼、内服を始めるのがお勧めです。当院では点眼だけでなく、内服、点鼻薬もお出しできるように準備しております。
メガネやマスクを使いましょう
花粉の飛入を防ぐためです。単純ですが、もっとも効果があります。ゴーグルのように周囲を覆うタイプが有効ですが、普通のメガネでも60~70%ブロックしてくれるといわれていますので、視力の良い方や見た目が気になる方は伊達メガネやサングラスでも良いと思います。風の強い日などは30分外にでるだけで、レンズにたくさんの細かい花粉の粒子がついてきますので、こまめにレンズをふき取ることも忘れずに。マスクはメガネが曇らないように、鼻の部分にスポンジパッドの入っているものがお勧めです。普段コンタクトレンズを使っている方も、この時期だけはできるだけメガネを使いましょう。レンズをつけている刺激がアレルギーを悪化させてしまいます。
目洗いは市販品でなくシャワーで
それでも入ってしまった花粉は洗い流すようにします。外出先では、目にやさしい、防腐剤の含まれていない点眼(人工涙液)を使用し、帰宅後は入浴時に体中の花粉と一緒にシャワーで洗い流すのがお勧めです。シャワーヘッドを上に向けて、噴水状になったお湯の頂点に顔を伏せてまばたきすると、最もやさしい水流で洗うことができます。水道水の塩素を問題視する方もいるようですが、私はむしろ強い水流が悪影響だと考えているので、1日1回このやり方なら問題ないと思います。小さなカップをかぶせて目を洗う市販品は、目の周囲についている花粉も洗浄液の中に浮遊して目の中に入ってしまうのと、洗浄液が必要以上に涙を洗い流してしまうことを考えるとあまりお勧めできません。
ご家庭での対策
患者様にお話を伺うと、ご家庭での花粉侵入防止の対策が意外におろそかになっている事が多いようです。実践できるかは各ご家庭のご事情にもよりますので、あくまでご参考程度に我が家の対策をご紹介します。 この時期は、帰宅してくると家族全員に頭から足まで入り口で花粉をはたき落としてから入ってもらいます。花粉は空気が動いている間は浮遊していますが、夜寝静まると床に沈んできますので、布団はやめてベッドにします。毎日の掃除機かけも必須です。窓開け、洗濯物や布団の外干しも極力控えてもらいます。花粉の時期は辛いですが、それが終わり、窓開けの解禁日が我が家には本当の「春の訪れ」で、その日はすがすがしい開放感にあふれています。
こすらず、冷やす
それだけ対策を立てても、憎き花粉は完全には防ぎきれません。どうしてもかゆくなるときもありますが、そのときはこすらず、ひたすら我慢です。つらいときには濡らしたタオルや冷却材で冷やすと良いでしょう。うっかりこするとその刺激によりアレルギーは急激に悪化し、白目が水ぶくれのようにはれたり、ますますかゆくなるので注意が必要です。
それでもかゆくなる時は
点眼薬
ステロイド・抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬などを適宜組み合わせて処方いたします。
《Point !》「ステロイド」はアレルギーの症状を抑えるのに非常に有効な薬です。通常、点眼薬でのステロイドは低濃度のものなので、正しく使用すれば副作用の心配はほとんどありません。中には眼圧上昇や色素沈着などの副作用を心配され、「絶対にステロイドは使用しない」とおっしゃる患者様がいらっしゃいます。しかし、ステロイドは古くからある薬で、どうしたら副作用を回避できるかもよくわかっていますので、むしろ積極的に使うべきだと私は考えています。少しでも不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。
点鼻薬
ステロイド・抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・血管収縮薬など、症状に合わせて処方いたします。
内服薬
抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬などを処方いたします。副作用として、眠気が問題になることが多いので、患者様の身体への負担を考慮に入れ、相談しながら薬を選択いたします。また、漢方にも即効性のある、症状を効果的に抑える種類のものがあります。その方の症状に合わせ適切なものを処方いたします。 これまで花粉症に対して使っていた薬がある方は、受診時にその名称をお教えいただくか、お薬そのものをもってきていただけますと治療の参考になります。
花粉症の根治療法
舌下免疫療法
「舌下免疫療法」は、現存する花粉症の治療で唯一「スギ花粉症を根治させる」治療です。「減感作療法」の方法のひとつで、花粉に対するアレルギーを獲得してしまった体にスギのエキスを少しずつ吸収させることで、体を花粉に慣れさせて、症状が出ないようにする、もしくは緩和する、というのが原理です。毎日1回服薬し、3年間継続する必要があります。その他にも条件や注意点がありますので、詳細はこちらをお読みください。
私自身も花粉症で毎年大変辛い思いをしておりますので、花粉症のつらさは誰よりも知っています。今までの経験と知識を総動員して、それぞれの方にあった最善の方法を模索し、誠意を持って対処いたします。お困りの方はぜひ相談にいらしてください。当院では、点眼薬だけでなく、飲み薬や点鼻薬、漢方の処方、また根治療法である「舌下免疫療法」も行っていますので、今まで症状がなかなか改善しなかった方や、忙しくて耳鼻科やアレルギー科といった他の診療科を受診できない方、目だけでなく鼻にも症状が出る方もお気軽にお越しください。