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院長ブログ

ゲームやスマホで斜視になる?

言うまでもなく、世の中へのスマートフォン、携帯ゲーム機、タブレットなどのデジタルデバイスの普及は目覚ましく、今回の新型コロナウイルス感染でstay homeを余儀なくされ、テレワークで仕事をすることになってさらに加速したのが現状です。

私も高校の同級生とオンライン飲み会をしましたが、スマホでLINEを使ってつながりました。(最後にはみんな酔いつぶれて、画面はつながっているのに誰も写っていない、という惨状でしたが…)

さて、スマホやゲーム機に夢中になっている人を良く観察すると、画面と目の距離がかなり近くなっていることが分かります。それは、電車で座っている時に文庫本を読んでいる人がいたら比べてみると分かりやすいのですが、文庫本を読んでいる人は、文字は小さいのに目から30㎝くらい離して読んでいるのに対し、スマホやゲームをしている人は20cmから近い人では15㎝くらいで見ています。

近いところを見るときに、人の目は寄り目になります。それを眼科用語では「輻輳(ふくそう)」といいます。これは非常に大事な機能で、対象物が近くなっても両目で同時にものを見る「両眼視」を維持します。「両眼視」は左右の目で同時に見ることで、ものの大きさや距離、スピードを推し量るのに必要な「立体視」に必要です。つまり、どちらかの目の視線がはずれてしまうとそれは「単眼視」になり「立体視」ができなくなってしまいます。

目の片方の視線がはずれてしまうことを「斜視」といいます。外側にはずれるのを「外斜視」といい、内側にはずれるのを「内斜視」といいます。

近年、スマホやゲーム機などの過剰使用により起こる「急性内斜視」が報告されています。マスコミでは「スマホ斜視」などと呼ばれているようですが、正式な名称ではありません。現時点でわかっていること、何に気をつけたらよいのかについてお知らせしたいと思います。

急性内斜視の発症にデジタルデバイスがどう関与しているのか、実はまだはっきりわかっていません。初めて報告された2016年の症例では、年齢は7~16歳で、筋肉や神経の麻痺はなく、少なくとも4か月以上、そして1日に4時間以上デジタルデバイスを使用していた子供たちだったということです。それ以外に内斜視になる原因がなく、使わないようにさせると改善したために、デジタルデバイスの過剰使用が原因と考えられています。

国内では、デジタルデバイスの使用をやめても内斜視が改善せず、手術が必要になった例も報告されています。

それらの報告は主に小児ですが、大人でも3D映画やVR(バーチャルリアリティ)のヘッドマウントディスプレイを使って一時的な斜視になることもあることが報告されています。そのためメーカーでは、使用年齢や使用時間など、独自の制限を設けているところも多いようです。

斜視になる要因としては、先に紹介した文庫本とスマホの対比のように、画面の近さが挙げられています。また、寝る前などの時間に、暗闇のベッドで寝ころびながら使用することも関係している可能性もあるようです。ゲームの内容によっては高速反応が必要で、素早くボタンを押すには片目で見る単眼視の方が有利なため、その状態で30分以上続けると斜視のリスクが上がるとの報告もあります。

これだけデジタルデバイスが普及し、多くの人が使っている中での急性内斜視の報告の数は決して多くはありません。しかし過剰に使用することで視力の低下にもつながる恐れもありますし、斜視になって手術をしなければならない場合もあるわけで、日常の使い方には配慮すべきだと考えます。

当院では患者様に「30分使ったら10分休む」「1日の使用時間1時間半以内」をお勧めしています。特に「視力が低下する」可能性があることをしっかりと伝えると、お子さんも納得して守ってくれることが多いように思います。

我々の子供のころにも「ゲームウォッチ」という携帯ゲーム機がありました。でも単体で1種類のゲームしかできず、適度に飽きるのでそれほど長い時間続けた記憶はありません。何よりも他に体を動かすような楽しい遊びがたくさんあり、ゲームに没頭するような暇はありませんでした。コロナ禍で家にいるしかなく、遊びも限定されてしまう今の子供たちは、ある意味気の毒に思います。

徐々に解禁はされてきていますが、マスクをせずに外で思い切り遊べるようになる日が早く来ることを願います。