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院長ブログ

繰り返される悲劇を防ぐには

先日、JR阿佐ヶ谷駅で視覚障害の方がホームから線路に転落し、自力で上がろうとしていて進入してきた電車に挟まれて亡くなりました。

以前のブログ(→クリックでリンク)でも転落事故の悲劇を取り上げましたが、その後も後を絶ちません。

私が驚いたのは、「阿佐ヶ谷」という中央線、総武線の主要駅の一つにもかかわらず、ホームドアが設置されていなかったことです。確かに、当院のある東戸塚駅にもホームドアはありませんし、私鉄に比べるとJR東日本の路線は、山手線以外は設置が遅れているように思います。

かつて国鉄が民営化されJRになり、効率化や人件費削減を進めたからでしょうかホーム上の駅員さんの数はみるみる減っていき、その頃の私は「事故や事件が起きたらどうするんだろう…」と、その光景に恐怖を感じざるを得ませんでした。

ホームに残されたのは「非常ボタン」。目立つように作ってはありますが、私たち利用者は、とっさの時に「非常ボタン」を押すことを思いつきませんし、その駅のどこにあるかなど把握していません。

今回のような事故の防止に加えて、人身事故やそれによる電車の遅延も防ぐことができると思いますので、全鉄道会社には今後、早急なホームドアの設置を望むところです。

また、東京新聞の記事によると、昨今のコロナ禍でソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を取るようになったからか、視覚に障害のある方が、周囲の方から声をかけられにくくなったとのことです。

阿佐ヶ谷といえば、中央線の駅の中でも比較的庶民的な、人情に厚い人が多いイメージがありましたので、現場に居合わせた人が事故を未然に防いだり、とっさに助けられなかったのも、そんな影響があったのかもしれません。

このような事故が起こるといつも上がるのが、「視覚障害の方に出会っても、最初の一声を何とかけたらいいか迷う」という声です。

確かに私も以前はそうでした。それは、電車でご高齢の方に席を譲るのと同様に、ちょっとした勇気も必要です。「断られたらどうしよう…」とも思います。

実際に視覚障害の方にお話しを聞いてみると、声のかけ方は何でもいいそうです。

「何かお困りですか?」「何かお手伝いしましょうか?」でもいいでしょうし、同じ方向に向かっていたら「どちらまで行かれますか?」でもいいと思います。その際に、そっと肩に触れて話しかけると、より分かりやすいそうです。

こちらの申し出を断られても気にしないことです。人を待っているのか、その場所に慣れているから手助けがいらないのかもしれません。

誘導する際に急に腕をつかまれたり、白杖を持たれたりすると不安になるそうですので、白杖を持っている手と反対の手でつかまれるように、自分の肩や腕をお貸しするのが良いようです。

そうはいっても、普段なかなか経験する場がありませんので、こういったことを教えて、体験するのを、小学校で必修授業にしたらいいと私は思います。

小学校の時に課外授業として「交通安全教室」がありました。警察や交通公園に出かけて行って、お巡りさんから直々に交通マナーを習い、最後にゴーカートに乗ったり白バイにまたがったりという楽しい授業でした。それと同じように、視覚障害の方にご協力いただき、街で出会ったらどうしたらよいのか小学生のうちに一度体験しておけば、大人になってからもその経験を生かして気軽に声をかけられるようになるのではないかと思います。

今回亡くなられた方は51歳、私とほぼ同じ年齢でした。心からご冥福をお祈りいたします。