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院長ブログ

iPS細胞関連の最近のニュース

このブログでも度々取り上げてまいりましたiPS細胞による治療について、最近重大なニュースがありました。

まず1つ目ですが、日本が最先端を行くiPS細胞移植による網膜の治療の臨床研究で、網膜がむくむ合併症が起き、手術を行ったと研究チームから発表されました。

研究チームリーダーの高橋政代先生は、「治療で入院を伴うため」これを「重篤な合併症」と発表していますが、「緊急性や生命への影響はなく、今後の研究に影響はない」ともコメントしています。

今回問題になり、手術で除去したのが「網膜前膜」です。光を感じ取る網膜の一部、特に中心部分の黄斑部の起こることが多く「黄斑前膜」「黄斑上膜」とも言われます。

一般的には目の中の老化に伴う自然経過で起きることがほとんどで、症状がない場合は治療はせずそのままにしておきます。進行して見え方がゆがんだり、むくみが出て視力が低下する場合は、今回のように手術をすることがあります。

今回の移植に限らず、眼の中の手術をした際には、ある程度の確率で起こってくる病態でもあるので、iPS細胞移植特有の合併症ではありません。再手術を受けられた患者様にはご負担だったと思いますが、むしろ、移植をするとこのような事象も起こり得るのだということが分かったことが収穫とも言えます。今後引き続き注目していきたいと思います。

そして2つ目は、広くマスコミで報道されていますのでご存知の方も多いと思いますが、iPS細胞研究の論文データ偽造問題です。

以前世の中を騒がせた「STAP細胞」問題でもそうでしたが、研究データの完全管理というのはなかなか大変で、研究者以外の第3者が完全に網羅、把握するのは難しく、日本で最も信頼できる研究機関である京都大学iPS細胞研究所や理化学研究所でさえも、ある程度以上は研究者のモラルに委ねられているのが実情なのでしょう。多くの研究者のほとんどが真面目に、真摯に研究に取り組んでいらっしゃる中で、今までコツコツと築き上げてきた信頼がたった一人の出来心によりあっという間に世間の信頼を失うことになるのだということを再び思い知らされました。

研究リーダーでノーベル賞受賞者の山中伸弥教授が引責辞任するかもしれない事態にまで発展したこの問題ですが、どうやら教授の給与を研究所に寄付することで落ち着きそうです。確かに善意の寄付金(私も含め→過去のブログへ)がデータ偽造の研究にも使われたことは残念ですが、今回の偽造されたデータ以外に、今後の研究に役に立つデータがあったとしたら、まったく無駄になることはないかもしれません。何よりも、良い意味で広告塔の山中教授が辞められたら、日本のiPS細胞研究は相当な遅れをとることは間違いありません。それは眼科の研究だけに限らず、医学全体の発展の妨げになりかねません。

今回の社会的インパクト、ダメージを肝に銘じて、山中教授や高橋先生はじめ研究者の皆様には「世界の最先端をいく日本のiPS細胞研究」を引き続きけん引して、頑張っていただきたいと思います。