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院長ブログ

子供の視力2 遠視について

「近視」を取り上げた前回(→クリックでリンク)に引き続き、今回は「遠視」についてお伝えいたします。

視力検査で「遠視」は「近視」ほど気にされることは少ないように思います。その理由を私なりに考えますと、まず近視に比べて絶対数が少ないこと、そしてもう一つは極端に視力が悪くならないことだと思います。

しかし実は「遠視」は「近視」よりも深刻な状態を引き起こす原因になる可能性があることを、このブログでご理解いただきたいと思います。

遠視のしくみ

ものを見るときにどう見えるかは、目の奥行きの長さ=「眼軸長」とレンズ(水晶体)の屈折=「焦点距離」のバランスで決まるとお話いたしました。「眼軸長」と「焦点距離」が同じだと良く見え(=「正視」)、眼軸長が焦点距離より長く網膜の手前に焦点が結ばれる状態が「近視」でした。(クリックで前回ブログにリンク)

「遠視」は近視の逆で、焦点距離が眼軸長より長く、見たものが焦点を結ぶのが、網膜よりさらに後ろに位置する状態です。

近視はものをはっきり見たければ、近づく、または近づける必要がありました。ところが遠視は自分の持つ「調節力」を使って、無理やり焦点を合わせることができます。「調節力」は目の中のレンズ=水晶体の厚みを変えることで得られます。もし遠視の人が近くを見たければ、目の中の筋肉がギューッと緊張し、水晶体の厚みを厚くするように変化させます。

そのため、遠くのものは比較的良く見え、検診などでの視力も0.7~1.0程度の場合が多いです。近くも調節力が使える範囲であればそこそこ見えますので、生活するのに何ら問題がないように思われます。

遠視の落とし穴

実はそこに落とし穴があります。遠視の人は、「見かけ上」見えてはいるのですが、目の中の筋肉は常に緊張を強いられます。そのため疲れやすく、頭痛や眼痛の原因となることがあります。

また、お子さんの場合、大人よりも柔軟で調節力の幅が大きく、たとえ強い遠視でもその調節力を駆使して視力検査の数値が良く出てしまい、遠視に気づかない場合もあります。

実際にはいつも筋肉が緊張していると疲れますので、むしろ筋肉はお休みをしている時間が長くなり、その間は遠視のお子さんははっきりとものを見ていない状態になります。

その状態が長く続くと、ものをはっきりと見ていなかったため目の機能が衰えてしまい(人間の体は使わないと衰えるようになっているからです)、大人になっても視力が出ない「弱視」という状態になる可能性があります。

また、人間の目は近くを見るときに調節力を使うのと連動して「寄り目」になります。これを輻輳(ふくそう)といいます。遠視の場合に近くを見るためには相当目の調節力を使わなければならないのですが、それと連動する輻輳が極端に起こり、目が寄ったままになってしまうこともあります。これを「内斜視」といいます。

つまり「遠視」は、その程度によっては「弱視」や「内斜視」を引き起こしてしまう原因になる、ということです。その分、早い時期からメガネを使用するなど、本格的な治療や対応が必要なのは、実は近視よりも遠視なのです。

遠視の検査

では遠視にどのようにしたら気づくのでしょうか?

大切なのは「検診」です。3歳児検診(横浜は4歳児)や就学時検診、学校健診などでは、視力1.0が基準になり少しでも悪い場合は眼科での精密検査を勧められます。それは視力低下の原因が、「近視」なのか「遠視」なのかしっかりと判定する必要があるからです。

少しでも遠視を疑われた場合、目薬をつける検査をいたします。それは「隠れた遠視」を見つけ出すためです。「調節力」を使われてしまうと「遠視」が隠れてしまい、「遠視」がどの程度なのかが正確には分かりづらくなってしまいます。そのために「調節力」を完全に取り除く必要があります。目薬で調節力を麻痺させることで、実は見かけ上正常に近い視力の人でも遠視があることを発見できます。

通常は外来で2回点眼をした後、1時間後に再検査します。遠視が強いことが見込まれる場合は、処方された点眼を自宅で1週間つけてきてもらい、薬が充分効いた状態で再検査する場合もあります。

治療

遠視の治療は、正しい度のメガネをかけることです。メガネをかけることでものがはっきり見え、その状態を維持することで目の機能は正しく発達し、「弱視」を克服することができます。また、余計な調節力を使わせないようにすることで、目がリラックスした状態になり、目を寄せる「輻輳」も過剰に働きませんので、目も正しい位置に保たれます。

ちなみに遠視のメガネのレンズは「凸レンズ」といって、虫眼鏡のように真ん中が厚くなっているレンズです。そのため、メガネをかけるとレンズ越しに目が大きく映ります。見た目が気になる場合は、性能の良い「薄型レンズ」を使用すると、さほど目立たなくなります。

まとめ

遠視は生まれつきの素質で、環境により左右されるものではありません。肝心なのは、早く気が付いて、早く治療を始めることです。早い場合は3歳ころからメガネが必要になりますので、「こんな小さなころからメガネをかけさせるなんてかわいそう」とおっしゃる親御さんも少なからずいらっしゃいます。私も人の子の親としてそのお気持ちはよく理解できますが、残念ながら治療はメガネをかける以外方法はありません。何よりも親の気持ちが伝わってお子さんもメガネをかけたがらなくなってしまいます。

将来、お子さんがどんなに努力しても視力が出なくなったり、視線がずれたままになってしまわないように、親としてすべきは、「メガネをかけることを嫌がらない」工夫と、「メガネをかけた君は素敵」と日々伝えること。そして将来的には、成長とともに遠視の度は弱くなってきますので、いずれメガネを使わなくても良くなる場合もあります。希望をもって治療にあたりましょう!

次回は「遠視」と似て非なるもの「老眼(老視)」のお話しです。