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院長ブログ

子供の視力1 近視の進行とその予防2020

本日(令和2年5月19日)までに、コロナウィルスの影響で休校となっている横浜市の学校再開の目処はまだたっておりません。新年度、新学期の新しい出会いや学び、そして体を動かす場を失っている子供たちは本当に気の毒です。

また、その影響で通常は4~5月に行われる子供たちの健康診断も延期になっており、そのうちの一つである視力検査もできない状態です。横浜市や学校からの連絡では今年の健康診断は秋に実施することになりそうで、視力が気になるお子さんやその親御さんは気をもんでいることでしょう。

文部科学省の2019年度の調査によると裸眼の視力が1.0未満の小学生は5年連続で増加し、34.57%、中学生は57.47%、高校生は67.64%で、小中高とも過去最多の割合だったそうです。

また、「Stay Home」の呼びかけの下、外出自粛を強いられている子供たちが家で何をするかというと、ゲーム、タブレット、スマホ、パソコン、テレビなど、いかにも目に悪いものばかり…。

現在当院は地域医療の拠点となるべく、従来通りの曜日と時間で診療を続けております。学校での視力検査が当分できそうもない現在、お子様の視力で気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。詳しい検査をしたうえで、対処方法を検討しましょう。

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視力低下の原因になる「屈折異常」は主に「近視」「遠視」「乱視」の3つですが、よく言う「目が悪くなる」原因は一般的に「近視の進行」です。今回は、世の中の親御さんみなさんが気にされている、といっても過言ではない「なぜ近視になるの?」「近視は治る?」「近視の進行は遅らせられる?」について、現在、眼科で行われている研究成果などの現状もふまえてご報告したいと思います。「遠視」「乱視」などについては別の回でお伝えします。

<どうして近視になるの?>

ものをはっきり見るには、目の奥の網膜に見たいものが鮮明に映る必要があります。それは、目の奥行きの長さ=「眼軸長」とレンズ(水晶体)の屈折=「焦点距離」のバランスで決まります。バランスがいいと、焦点がちょうど網膜に合うので、網膜に映る像がはっきりします。それが「正視=目の良い人」です。カメラでいうと、被写体にぴったりピントが合った状態です。正視jpeg

一方、その2つのバランスが悪く、焦点距離が眼軸長より短いため、網膜よりも手前に焦点を結んでしまう、それが「近視」です。時々、どこにピントを合わせたらよいかわからずにカメラやスマホが迷っている時の、ボケた画面がそれにあたります。近視jpeg

眼軸長はお子さんの成長に伴い2歳まで急速に、それ以降は10歳まで徐々に伸びてゆきます。その分、水晶体の屈折力が減る=焦点距離が伸びてゆくことで、バランスをとっています。ところが水晶体の変化は8歳までで、8歳以降、水晶体の屈折力は変わらなくなります。それ以降に眼軸長が伸びてしまうとその分近視が進行する、という仕組みです。そのため、近視は8~16歳に進行することが多い、という研究結果が出ています。

<近視になりやすい諸条件、環境>

統計では、近視は東洋人に多い傾向にあります。あるデータを元にすると、日本人の近視率は50%以上でした。

また、ご両親のうちの1人またはお2人ともが近視であることで、そのお子さんは近視になりやすい傾向にあります。これは私の推測ですが、お顔立ちが似ている親子は、当然目の形も似ているわけで、前述の眼軸長と焦点距離の関係も同じように引き継いでいるためと思われます。「近視は遺伝する」科学的な根拠はありませんが、まことしやかにそう言われるのは、こんなところからきているのではないでしょうか。

その他でわかっていることは、①30cm未満の距離で読書をする ②30分以上持続して読書をする ③野外活動の時間が短い などが近視を進ませる可能性があることは実証されています。近年では「読書」を「ゲーム」「スマホ」「タブレット」に置き換えてもよいわけです。昔から言われる「本を読むときは姿勢良く」「のびのび外で遊ばせる」ことは、あながち間違ってはいないということになります。ちなみに「高学歴」「IQが高い」ことも、近視になりやすい条件です。これは勉強を頑張った結果の副産物かもしれません。

<近視が進むとどうなるか>

近年では「近視は病気」と言われることがあります。正式には「病的近視」といい、近視が進行することで目の奥が変形し、網膜や神経が引き伸ばされたり裂けたりすることでダメージをうけ、メガネやコンタクトで矯正しても視力が出なくなってしまう「病気」の状態を引き起こすことがあるからです。「病的近視」は近視の強い人ほどなりやすい傾向にあります。

<近視の進行予防の研究成果>

動物実験では、近視が進行する=眼軸長が伸びる理由が一部解明されていて、それを元にした人間の近視の進行予防も研究されています。

①メガネ
必要以上に強い度のメガネでは、眼軸長が延びて近視を進行させてしまう恐れがあります。「メガネをかけると余計に目が悪くなる」と言われるのは、合わないメガネを使っている場合に限ってのことです。そのため、メガネ作製の際は、正確な度数にすることが近視の進行予防につながりますので、必ず眼科で検査を受けて正しい度数の処方箋を発行してもらうことが大切です。ちなみに「メガネをしたり外したりするのは目に良くない」というのも根拠がありません。

遠近両用メガネ(境目のないタイプ=累進レンズ)を子供が使うことで、近視の進行を抑制する効果が確認されています。目とメガネの位置などデリケートな調整が必要で、効果には個人差がありますので評価が難しいのですが、ご希望の方には当院のメガネ外来でも処方、作製できるようにしています。

➁コンタクトレンズ
コンタクトレンズもメガネと同様で、度の強すぎるものは近視を進行させる原因になり得ます。必ず眼科を受診の上適切な度数を確認して、購入することが大切です。

近視矯正のために就寝中にコンタクトレンズをつける「オルソケラトロジー」で近視進行予防の効果が報告されています。最新の研究では12歳以下の低年齢でより効果を認めることが分かっています。当院ではレンズの扱いや安全性を考慮し、開始年齢は10歳からとしています。(詳細はこちらから→クリックでリンク

③目薬
瞳孔を広げる作用のある目薬を、低濃度で使うことにより近視の進行予防の可能性がある、という研究結果がシンガポールで出ています。現在、日本のいくつかの大学病院で臨床試験が行われていますが、まだ実証、承認されるまでには至っておりません。毎日欠かさず点眼し、少なくとも2年間継続する必要があります。現在、保険適応外で販売されているところもあるようですが、当院では臨床試験の結果を待って、慎重に導入を検討する予定です。

④バイオレットライト
ある研究機関の最近の研究で、目に悪いと言われているブルーライトよりも波長の短い「バイオレットライト」を、むしろ浴びることで、近視進行予防の可能性がある、という報告が出ています。「バイオレットライト」は屋外のみで浴びることができる光線なので「外で遊ばせる」ことが近視の進行予防になることの科学的な根拠になる可能性がありますが、ブルーライトは目に悪いからカットして、バイオレットライトは浴びないといけない…とややこしく、この相反する2つはいずれも同施設からの報告ですので、他の多施設で科学的に実証できるまでは時間がかかりそうです。

⑤その他

近視を進ませないようにすると言われている慣習や工夫、例えば「遠くを見せる」「目に良い緑を見せる」「目をよくするトレーニングをする」「目をよくする本を見る」等に関しては、近視の進行予防の明らかな根拠となる研究結果はでていないようです。

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私なりにまとめてみますと
・はじめから近視にならないように予防する方法はなさそうです:そのお子さんが持つ目の素質により左右される。
・必要以上に近視が進むのを予防する方法はありそうです:「正確な検査をもとに作ったメガネやコンタクトレンズを使う」「外遊びなどのびのびと、健康的な生活を送る」「姿勢をよくして、勉強をしたり本を読む」「長時間のゲーム、スマホ、テレビは控える」
・これをしたら近視が進行しない!という決定的な方法はまだないようです。進行を遅らせるという意味では、「オルソケラトロジー」は最も有力な候補と言えるでしょう。「遠近両用レンズ(メガネ、コンタクトとも)」にはわずかな期待があり、「目薬」や「バイオレットライト」は希望はあるが検証中といったところです。

そして今Stay Home(お家)でできる対策として私からの提言です。

①適度な照明を使いましょう

➁本を読むとき、スマホやタブレットを見るときは、姿勢を良くしましょう(30cm以上離して)

③テレビは1日1時間、スマホやゲームは1日30分にしておきましょう

④睡眠は充分にとりましょう

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一般的には「近視になる」=「目が悪い」という認識ですが、見方を変えれば、軽度の近視になると裸眼で近くを見るのに不便がないため、夜遅くまでテレビやパソコン、スマートフォンを見る現代の生活に目が適応してきている、という説もあります。また、近視の方は将来「老眼」=「近くが見づらい」にもなりにくいというメリットもあります。

今は、大人になるとできる視力矯正の方法(手術など)が増えてきました。今の子供たちが大人になるころには、さらに安全で確実な方法が確立されていることも期待できます。そのため、病的近視になり取り返しのつかないことにならない程度に近視の進行抑制を心がけることが大切だと私は考えます。

早く子供たちが外で元気に遊べる日が来ることを願ってやみません。

(この記事は、2013年12月20日の旧ブログ記事を再改定して掲載いたしました)