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院長ブログ

iPS細胞による目の治療(最新情報2020.6)

6月11日に、報道各社から下記のような記事が発信されました。

「厚生労働省の専門部会は11日、人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作ったシート状の網膜組織を、進行性の難病「網膜色素変性症」の患者に移植する神戸市立神戸アイセンター病院の臨床研究の実施を了承した」

これまでもiPS細胞の移植による目の治療はこのブログでも取り上げてまいりました。

「目の病気にiPS細胞が使われます」(クリックでリンク

「iPS細胞移植の承認」(クリックでリンク

「iPS細胞移植の成功のニュース」(クリックでリンク

「iPS細胞関連の最近のニュース」(クリックでリンク

いよいよiPS細胞による再生医療も次の段階に入ってきた感じです。この臨床研究も、これまで日本のiPS細胞による網膜再生医療を牽引している高橋政代先生のグループが行うようです。

「網膜色素変性症」は、網膜の光を感じる細胞が徐々に失われていき、視野が周辺から中心に向かって狭くなり、最終的には失明することもある進行性の病気です。色々なお薬での治療が試みられていますが、今のところ効果のある治療方法が見つかっていません。進行の速度は個人差が大きく、患者様は日々「将来光を失うかもしれない不安」と闘わなければならない、辛い病気です。

もし今回のiPS細胞移植により、失われてしまった光を少しでも取り戻せるなら、患者様にとってはまさに「光明」です。

これまでの移植治療と同様に、まずは移植した後に不具合が起きないか安全性を確認し、問題がなければ次に機能の回復を評価する、という流れになるでしょう。安全性の評価には1年以上、機能の評価には5年以上はかかると思われますので、結果が出るまでには一定以上の時間が必要です。

今のところiPS細胞による再生医療の研究は、眼科領域はもちろんのこと、他分野でも最先端を走っている日本ですが、他国、特に研究予算の潤沢なアメリカとの競争は熾烈を極めます。アメリカに独占されるようなことがあれば、治療費が高額になり、本来治療を受けられる方も受けられなくなってしまう恐れがあります。

そのようなことがないように、京都大学のノーベル賞受賞者、山中伸弥教授が立ち上げた10年プロジェクトに対し、昨年の12月には「iPS細胞事業への国からの支援を削減する」ともとれるような驚きの施策方針が山中教授に伝えられ(のちに撤回)たり、日本政府は、治療の確立を心待ちにしている人が世界中にどれだけいることか、iPS細胞事業の本当の価値を理解しているのか、はなはだ疑問に思います。

私の知り合いで、まだ若いお嬢さんが網膜色素変性症と診断され、大変思い悩んでいるお父さんがいます。患者様にとっては、いち早く治療が受けられるようになることが最大の関心事でしょう。今後の研究が滞りなく進み、治療の研究開発が「日本発、世界初」になることを願ってやみません。