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院長ブログ

悲しいお別れ

M先生へ

1年ぶりに届いた大学病院の同窓会誌。朝の診療前の空き時間にパラパラとめくっていると「M先生を偲んで」。眼科の主任教授が書いていました。

は…?何これ?そんな訳ないでしょう、あのM先生が。私は混乱しました。えらく手の込んだエイプリルフール?

読み進めていくと、先輩や私の同僚も追悼文を書いている…それは本当でした。

知らなかった…1年間ずっと闘病されていたことも。亡くなってから、2か月も経つまで気づかなかったなんて…私は動揺し、自分に失望しました。そして、思い浮かぶ人懐こいM先生の笑顔。いや、まさか、そんな…申し訳ありませんでした、先生…。

その後の朝礼でスタッフを前に何を話したかうろ覚えです。いざ診療を始めても、涙が出てきそうになり、マスクで表情を隠し辛うじて平静を装いますが、いざ喋りだすと、声が震えてしまいます。その日は患者さんにもスタッフにも気づかれないようにするのが精一杯でした。

日本人離れしたお顔立ち、体格の先生にお会いしたのは、私が大学病院の眼科に入職して間もなくの頃。どこかで会ったことあるな、この人、と思って記憶を辿ったら、なんと中学、高校の1つ先輩で、校内で良くお見かけした人でした。医学部に入る前に別の大学に4年在籍した私の経歴の関係で、中学、高校では1つ上でも、病院では5期上の先輩。常に近しいけど頼りになる存在として、いつも尊敬していました。そして学んだことは数知れずでした。

「人たらし」とはこの人のためにある言葉、といっても過言ではないほど、教授から医者仲間、看護師さんから病院内の医療従事者の誰からも好かれていました。医療以外も何でもできて、魅力にあふれた人でした。

草野球、しましたねぇ、先生。

東京都内の大学病院の眼科対抗野球大会で、うちのチームは黄金時代を築いた後、エースが留学でいなくなって低迷し、他に誰もいなくてピッチャーしましたよ、私。予期せぬロングリリーフで孤独に投げる私に、監督兼キャプテン兼スラッガーとして、先生は守備に就いた1塁からねぎらいの声を常にかけて下さいました。おかげで最後まで投げ抜いて、優勝決定のマウンドに立っていられましたよ。ありがとうございました。

カラオケで一緒に「夏の終わりのハーモニー」歌いましたねぇ、先生。

ずっとバンドもやっていて、歌もうまかった先生は、陽水と玉置の音階を行ったり来たりする下手な私の歌にもうまく合わせて、ハモってくれました。おかげで私も気持ちよく歌えましたよ。ありがとうございました。

子供たちを連れて、遊びに行きましたねぇ、先生。

うちの娘と同じ年の、双子の女の子。家族ぐるみで仲良くしていただきました。東京ドームシティでご飯を食べたときに、先生が我が家のために追加で買ってくれたデザート、そんな気遣いがさりげなくできる人でした。素敵な奥様にも色々なことを教わり、私の妻もそんな先生夫婦にはメロメロでしたよ。楽しい時間をありがとうございました。

大学病院での手術指導、心強かったです。学会で魅せたタキシード姿、素敵でした。

”思い出は美しすぎて、それは悲しいほどに…” そんな歌詞が、今、心に沁みます。もう一度、お会いしたかったです。知らなかったのは、本当に、本当に私の不徳の致すところです。

先生の教えを胸に、今私に与えられた役割、地域医療に貢献することに、今後もまい進してまいります。どうぞ天国から見守っていてください。

そして心から、ご冥福をお祈りいたします。