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院長ブログ

「忘れる」ということ

最近、物忘れが多くなりました。

何かをしようとして机に向かうのですが、何をしようとしたのか忘れてしまったり、家でやろうと思って持ち帰った仕事を忘れて寝てしまい、翌朝大慌てしたり、クリニックの下の階にあるスーパーで患者さんとばったり出会って「あ~○○さんこんにちは~」と言おうとして「○○さん」が出てこずに、「あ~こんにちは~(ニコニコ)」と笑顔でごまかしたり…(申し訳ありません、○○さん…)。

パソコンに容量があるように、記憶力にも人それぞれの容量があると思うのです。54年間色々な経験を積んで記憶をためておくと、いつしかそれが一杯になり、忘れていかないと新しい記憶が入らない状態になりつつあると理解しています。まぁ、それが最近になって始まったわけではないのですが…。

言語学者で評論家の、ベストセラー「思考の整理学」で知られる外山滋比古さんは、著書「忘却の力」でこう書いておられます。「現代の人間にとって、記憶以上に大切なものは忘却である。コンピューターにはまちがっても選択的忘却という芸当はできない。忘却と記憶は、吸って吐く呼吸のように一対で、忘れるからこそ、新たな記憶ができる」

それを受けて、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生も、ある雑誌の記事でこう書いておられます。「この考え方はとても納得できる。中高年になると、若いころに得た知識をずっと覚えていて、それが古くなっていることに気が付かないことがある。でも、忘れることができるからこそ、新しいことを記憶することができる。知識の新陳代謝がなされるのである。人間は、忘れるようにできている。だとしたら、記憶力の悪さは「欠点」なのだろうか。自己弁護するつもりはないが、「忘却力」というのも生きるうえでプラスに働くこともあるのではないか」

「忘れる」ことには別のメリットもあります。忘れることで、他人を許すことができるし、失敗を恐れず挑戦ができます。例えば、上司がいつまでも部下の失敗を覚えていて、ことあるごとにそれを引き合いに出され「あいつは新人時代からだらしなかった」などと言われたら、その人にとってはやるせなく、やる気も失ってしまうに違いありません。失敗を忘れて、その人の今を正しく評価する、または新しいことに挑戦することで前に進んでいけるのだと思います。

日々更新される最新の眼科診療の情報や、クリニックの運営の経験や、患者さんやスタッフや家族との関わり合いで学んだ知識を更新していくために、必要ないことは自動的に消去される運命と自分勝手に前向きにとらえています。でも患者さんのお名前は憶えておかないと、ですね。

今の世の中は、必要な情報もそうでない情報もネットに載ってきます。そして忘れてもらいたいことが必要以上に広まって(いわゆる炎上して)しまったり、あまりの情報の多さに忘れてはいけないことも忘れ去られてしまったり…。

実はこのブログも私の中では、忘れてはならないものを記録に残して見返すための備忘録と位置付けています。今後は「忘却力」を意識して、本当に忘れてはいけないことはしっかりと記憶に留め、古いことを忘れることで新しいことに挑戦する姿勢を「忘れない」よう心がけていきたいと思います。