電話をかける

045-392-5263

東戸塚 眼科 片桐眼科クリニック|東戸塚駅 西口より徒歩1分 モレラ東戸塚3階

TEL.045-392-5263

院長ブログ

尊敬する人

私が心から尊敬する人の一人が、故・中村哲先生です。

私が説明するまでもなく、パキスタン・アフガニスタンでの僻地医療と、井戸掘削や用水路整備による干ばつ被害からの救済に尽力された医師で、残念ながら3年前に武装集団に襲われ、凶弾に倒れました。

少し前になりますが、その中村先生の長年の活動をずっと記録し続けたドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯をともす」を観てまいりました。元々テレビ放映されたドキュメンタリー番組に、未公開映像などを加えた劇場版です。

印象的だったのは、中村先生の「目」です。車も入れないような標高3500mを越える山岳地帯を歩いて、または馬に乗って村に行きつくまでの強い意志が宿った「目」。そしていざ診療が始まると、せつせつと訴える村人の言葉に丁寧に耳を傾け、診察するときの優しい「目」。決して大きく輝く瞳ではないけれど、接しているだけで「本当にこの人は信頼できる」という雰囲気を醸し出す、とても魅力的な目をしておられます。

そして、医師であるにもかかわらず、現地の干ばつ被害の深刻さを感じ、どうしても必要と考えるや独学で土木を学び、重機を自ら操縦し用水路建設の先頭に立ち、そして成し遂げる…用水路のない殺伐とした砂漠が、用水路建設後に本当に緑の大地に変わっている、その前後を定点で映した映像は、信じられないほど感動的で、中村先生のその実行力の凄さは、もう私のような凡人には言葉では言いつくせません。

そして、現地の人からも周りのスタッフからも人望の厚い中村先生だからこそ、このような大事業を成し遂げられたのだということが、映像を観ていてもよくわかります。でなければ、言葉も民族も宗教も違う一人の日本人の影響がこれほど広がるわけはありません。このドキュメントをずっと撮影していた谷津賢二監督も「中村医師に惚れてしまった」とインタビューで書かれていました。

映画のパンフレットから引用すると「自分の物差しで現地の文化や習慣を劣っているとか優れているとか、進んでいるとか遅れているとか言うのは間違っている」「私たちの周りはとにかく恵みであふれているんだ。それに気づくか気づかないか」「まずやってみる」など、お人柄が垣間見える言葉がたくさんあります。また、”どんな人でも、一人ひとりの価値を認めて、言葉にしていた”とは、30年以上一緒に活動されてきた看護師さんの言葉です。

失礼ながら意外だったのは、遠く中東の地でお一人でご活躍されていながら、日本に奥様もお子様もいらしたことです。そしてお子様のお一人を、幼くして病気で亡くされているという、大変つらいご経験もされているのだそうです。穏やかでありながら意思の強いその目は、そのような経験をも乗り越えてこられたからなのでしょう。

亡くなられて3年。先月の命日4日にはマスコミで様々な追悼記事が出ていましたが、今でも中村先生の功績は現地の方に尊敬され、その遺志は受け継がれているといいます。

中村先生の生き方は、俗な言い方をすれば「究極の他者貢献」です。私にはとても真似はできませんが、幸い職業として「他者貢献」をする環境を与えられています。私はせめて、当院にいらした方々に「信頼」され「貢献」できるよう、スタッフともども日々精進していきたいと思います。