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院長ブログ

「まぶしい」ということ

みなさんのなかに「まぶしい」と感じたことのない人はいないでしょう。「まぶしい」は人間の感覚として、当たり前に備わっているものです。

眼科用語では「羞明(しゅうめい)」といいます(当院公式YouTubeで詳しく説明しています→クリックでリンク)。では、どうして「まぶしい」のでしょうか?

目はよくカメラに例えられます。特に昔のフィルムカメラが引き合いに出されます。角膜や水晶体は「レンズ」、光の調節をしている虹彩(瞳孔)は「絞り」、そして実際に見たものが写る網膜が「フィルム」に例えられることが多いです。

私が大学生くらいまでは、フィルムカメラが主流でした。あのメカニズムは好奇心旺盛で多感だった中学生の男の子にとってはとても興味をひくもので、私はこっそり父親のカメラを引っ張り出して、フィルムを入れずにシャッターの構造や1/20秒や1/500秒などのシャッタースピードを確認してみたり、絞りをマニュアルでカタカタ開け閉めしてみたりして、そして実際にフィルムを入れて写真を撮ってみたりしたものでした。まあ今だから言えますが、その時見つかったら父親から大目玉を食らっていたでしょう。

今はスマホのシャッターさえ押せばピントも露出も素晴らしくきれいな写真が何枚でも撮れますが、当時はせいぜい「露出優先」だったり「シャッタースピード優先」だったりの機能しかついておらず、それを考えながら、そして撮り直しや連写がききませんので、1枚1枚慎重に撮影していました。

さて、「まぶしい」に戻りますが、カメラに例えるなら「露出オーバー」の状態です。目の感覚が許容できる光の総量というのはおそらく決まっていて、それよりも多くの光が入ってくると、見え方が「露出オーバーの写真」のように白く光って不鮮明になるため、不快と感じるのが「まぶしい」感覚なのだと思います。

「思います」と歯切れが悪い表現になったのは、実はその感覚を司っているのがどの神経や脳の領域なのか、なぜ「まぶしい」と感じるのか、その詳細は今のところわかっていないのが現状で、あくまでも私の推測の域を出ないからです。

「まぶしい」をまぶしくないようにする調節をしているのが、まぶたであり瞳孔です。まぶしいときには誰もがまぶたを閉じるか薄目をします。また、黒目の奥の光の通る穴=瞳孔がぎゅっと絞られて小さくなります。これを「対光反射」といい、人の生死を見極めるのにも使う大切な反応です。映画「ジュラシックパーク」では、恐竜のヴェロキラプトルの目が、懐中電灯で照らされてキュウっと縮むシーンが印象的でした。これはまさに、露出オーバーの時に絞りを絞って写真を撮るという、カメラの撮影の基本そのものです(カメラが目の構造を真似した、とも言えますが…)。

一方、光の量に関係なく、瞳孔が開いてしまう病気もあります。瞳孔の調節に関与する動眼神経が麻痺すると、対光反射が鈍くなり、光を当てても瞳孔が絞られずに開いたままになります。その他にも、急性緑内障発作や虹彩炎、外傷などでも起こり得ます。

瞳孔が開いてなくても感覚過敏でまぶしく感じることもあります。白内障や角膜のキズで光が乱反射すると、通常の日光やライトの光でもまぶしく感じます。ストレスや目の疲労などでも起こりますし、小児で特に目に病気や視力の異常がなくても、まぶしさだけを訴えることもあります。

また眼科の診察では、目の内部の病気の発見や詳細確認のために、検査用の点眼を使って瞳孔を開くことはしばしば行われます。薬が効いてしまうと、4~5時間は瞳孔が開いたままになるため、その間はまぶしく、ピントも合わせずらくなります。

まぶしいときには、サングラスやつばのある帽子を使いますが、特殊なものとしては、野球選手がデーゲームで使っている目の下の黒いライン「アイブラック」があります。これについては当院公式YouTube(→クリックでリンク)で紹介していますので是非ご覧ください。

「まぶしい」という状況は、目の機能が制限され、動物である人間にとっては、外敵から身を守るのに不利だったり、あるいは襲われやすい可能性があり、本能的に危険や恐怖を感じるような仕組みがあるのかもしれません。一方で、「痛い」や「苦しい」に比べると、意外と我慢できてしまう感覚でもあります。隠れた病気があるかもしれませんので、日ごろから「まぶしい」と感じる方は、是非一度眼科を受診して、相談することをお勧めいたします。