電話をかける

045-392-5263

東戸塚 眼科 片桐眼科クリニック|東戸塚駅 西口より徒歩1分 モレラ東戸塚3階

TEL.045-392-5263

院長ブログ

犬はどう見えているの?

我が家には犬がいます。(ブログ「イヌも、ものもらい」→クリックでリンク

毎日朝は私が散歩しています。30分一緒に歩くと汗をかき、よい運動になります。いまだに大きな病気ひとつしないで健康でいられるのは、両親からもらった強い体と、この毎日の運動のおかげだと思っています。

また、日ごろから精神的にも大変癒されています。仕事から疲れて帰ってくると大抵はもう寝ころんでいて「ただいま」と声をかけると(めんどくさそうに)上目遣いの表情でお迎えしてくれます。でも私がベッドに入ると、必ずやってきて開いた足の股の間にくるりと丸まり、顔を太ももの片方にもたれかけます。それがまたかわいいのです。

さて、それだけ生活を共にしている犬の目ですが、眼科医である私としたことが、これまでノーマークでした。それで今回ちょっと調べてみました。

①犬の視力はどのくらい?

眼球から脳に情報を送る神経の数が、人間では約120万本あるのに対して犬には約17万本しかないことから、犬では脳に送られる情報の量が少なく、人間ほどの視力はないと考えられています。また近いところを見る能力も、人間の目は15cmぐらいまでピントが合いますが、イヌでは60~70cm以上はなれていないとピントが合わないようです。それは犬の水晶体が人間よりも分厚く、水晶体の厚さを調整してピントを合わせるのが難しくなるのと、ピントを合わせるための毛様体と呼ばれる筋肉の機能が人間よりも低いためです。人間でいうとだいたい0.2~0.3程度の視力しかないと言われています。

犬の視力の測り方は人間の視力検査とは異なり、犬の目の前に脱脂綿の球を落とし、綿球の動きを目で追えているかどうかで視力を確かめる、綿球落下試験を行います。この検査では動くものを追いかける動体視力も確認することができます。

犬は嗅覚と聴覚が非常に優れていて、特に嗅覚は五感の中でも最も優れており、人間の1,000~1億倍ほど。聴覚も聞き取れる音の範囲が広いうえ、人間が聞こえる音量の約6分の1程度の音でも聞き取れるのだそうです。このように優れた嗅覚と聴覚が視力を補ってくれているため、視力が0.2~0.3であっても、同程度の視力を持つ人間よりも世界をはっきりと知覚できているのです。

②犬の視野ってどのくらい?

犬は人間より左右に広い範囲を一度に見ることができます。犬も人間も片目で見える視野は150度ほどですが、人間の視野が左右で約120度も重なっているのに対して、犬は重なりが約60度。ですから、両目で見える範囲は、人間は約180〜200度、犬は240〜270度にもなり、斜めうしろまで首を動かさずに見えるのです。

左右の目で視野が重なる部分は、自分からの距離もわかるので、もののようすをくわしく見ることができます。人間は正面のようすをくわしく観察できるように、犬は広い視野でものをとらえられるように発達したと考えられています。

このことは、犬の網膜の構造にも表れています。人間の網膜はまん中にくわしく見分ける能力が特に高い部分がありますが、犬では人間ほど集まらずに広がっています。

③犬は色の識別はできないの?

以前は「犬には色が見えていない。モノクロの世界で生きている」といわれていましたが、近年それは違うということが分かってきています。

網膜にある視細胞は、いわば光センサーで、暗いところでも光を感じとる桿体(かんたい)と、明るいところで色などを詳しく見分ける錐体(すいたい)の2種類があります。犬は人間と比べて錐体の数がとても少ないため、色を見分ける能力が低いと考えられています。

さらに、人間の錐体には赤、緑、青という光の三原色を受け持つ3種類がありますが(詳しくは公式YouTube「色覚と色覚検査の話」をご覧ください→クリックでリンク)、犬には青と明るい黄色の2種類の錐体しかなく、その組み合わせでまわりを見ているようです。そのため、赤い色が見えにくい(暗く見える)とされています。

犬が正しく認識できる色は、青、黄色、青と黄色の中間色と言われています。特に、赤と緑は区別が苦手な色といえます。遊ぶ場所によってはおもちゃと地面(赤いボールにグリーンの芝生など)の色が区別しづらく、おもちゃを見失ってしまうことがあるそうです。先述のように犬はにおいをかぎ分ける能力が高いので、色よりもにおいで相手を区別できるため、色は重要ではなかったと考えられています。

④犬は暗いところでもよく見える?

犬の目に暗いところで光があたると、ぴかっと光ることがよくあります。これは犬や猫、タヌキなどの動物には、目の網膜のうしろ側に、人間の目にはないタペタム層があるためです。タペタム層は、網膜の視細胞を通り抜けた光をはね返してもう一度網膜の視細胞に戻すので、視細胞はより弱い光でも感じとることができます。

また犬は入ってくる光の量を調節する、ひとみのまん中の穴(瞳孔)を人間より大きく開くことができるので、より多くの光を網膜に入れることができます。

これは犬の祖先が、薄暗いところでも狩りをしていて、暗くても良く見える必要があったから、と言われています。確かに我が家の犬も、夜電気の消えた暗い部屋の通路を、こともなげにスタスタと歩いています。

⑤犬の目には特殊能力はあるの?

人間は青(光の波長が短い色)から赤(波長が長い色)までを見ることができますが、さらに波長の長い赤外線やより短い紫外線は見えません。犬もだいたい同じと考えられてきましたが、最近になって犬の目の水晶体が紫外線を通すことがわかりました。これが見る能力に関係があるかはまだわかっていませんが、もしかすると、犬は紫外線を感じているかもしれません。

また、犬の眼球には「クリプトクローム1」というたんぱく質が見つかっています。これとよくにた物質の「クリプトクローム1a」は、渡り鳥が方位を知るのに利用するなど、鳥類では磁気センサーとしてはたらいていることが知られています。もしかすると犬も目で磁力を感じて、遠く離れたすみかに帰るためなどに使っているのかもしれません。逃亡した愛犬が、いつのまにか自宅に戻ってきた、などという美談もそのお陰かもしれません。

以上が今回私が調べた犬の目の機能です。

我が家の犬の写真、実は診察台の見えるところに貼ってあり、私は毎日それで癒されております。犬好きの方、興味がおありの方はぜひお声がけください。また当院公式YouTube「どうして「まゆげ」はあるの?」(→クリックでリンク)にもチラッと出演していますので、よろしければご視聴くださいね。