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院長ブログ

目薬の市販薬と処方薬

みなさんは、市販薬の目薬、お使いになりますか?

患者様からよく受ける質問に「先生に処方してもらった目薬がなくなったら、市販の目薬をつけるのでもいいですか?」があります。

答えは「同じ効果は期待できませんが、つけて効くと感じるならいいのではないでしょうか」です。つまり、医学的には効きませんが、ご本人が効果を感じて使っているのであれば、それでよいでしょう、ということです。

「市販薬」は、医師の処方箋がなくても薬局(ドラッグストアなど)で購入できる薬で、「処方薬」は医師の処方箋をもとに、調剤薬局で処方される薬のことです。その2つには大きな違いがあります。

典型的なのは「スキッとする」成分です。メントールなどのいわゆる「清涼剤」は、私たち医師の処方する処方薬の目薬には一つも使われていません。それは「医学的な効果がないから」に他ならないのですが、市販薬の目薬はこれが大きな「売り」の一つになっています。例えるならば、のどが渇いたときに、炭酸系の飲み物を飲んだ方が(気分的に)満足感が高いのと似ています。でも、熱中症などの脱水症状には、炭酸飲料はお勧めできません。

市販薬ではまた、かゆみ止め効果が期待される抗アレルギー剤で、処方薬ではもうあまり使われなくなった(つまり効果の弱い)1世代前の薬剤が使われていますし、結膜炎やものもらい用として売られている抗菌剤の抗菌成分は、効果が弱く耐性がつきやすいため、処方薬や全身投与薬では単剤では使われないような薬剤が使われています。

そして、多くの市販薬には「血管収縮剤」が入っています。これは充血対策です。充血は、主に白目の血管が拡張することにより起こります。その拡張した血管を収縮させるので、あっという間に白くなり、目薬がとてもよく効いた気にさせられます。ところが問題は、なぜ血管が拡張しているのか?ということです。血管が拡張する原因は、血液に含まれている成分が大量に必要とされているからです。例えば目に傷がついているときに修復する成分、感染を起こしているときに細菌を退治する成分などです。つまり目にとって必要に駆られて充血をしているのに、無理やり収縮させるため、必要な成分が充分に届かず見た目が良くなるだけで目の健康には良いことはありません。

つまり私たち眼科医からすると、市販薬は「どうしてこの成分が…」と思うものが多いのです。そしてびっくりするほど高価だったりします。特に、宣伝文句が派手なものの値段がより高いのは、栄養ドリンクと同じですね。

不思議なのは、処方薬を作っていないメーカーが市販薬を製造、販売するのはわからなくもないですが、日本の良心的な製薬会社さえも同様の成分で市販薬を製造、販売していることです。その真意は、いつか製薬会社の責任者の方に聞いてみたいと思っています。

確かに、眼科を受診するとなると、受付して長い時間待たされてやっと診察、目薬を処方されてまた薬局で待たされて…ということを考えると、その時間を確保できない方にとっては市販薬が効けばそれに勝ることはないでしょう。ただし使い方を間違えると、むしろ目に良くないことも起こりうるので、市販薬を購入の際は薬剤師さんのいる薬局で相談し、2~3日使ってもよくならなければ、必ず眼科を受診することをお勧めいたします。

(このブログを書くにあたり、総合新川橋病院副院長の薄井紀夫先生が作成された資料を参考にいたしました)