前回の人工眼の記事はご関心をもたれた方が多く、一時期は当ブログでもランキング1位を保っていました。遅ればせながらですがお約束通り、人工眼の構造と、現在の機種でどれだけの機能が期待できるかをお伝えいたします。
以前の記事で“「ごつい」システム”と申しましたが、報道された写真ではイメージが掴みづらかったのではないかと思いますので、当ブログ初の「画像」をアップして、ご説明いたします。(ずいぶん前に取り込んだ画像ですので、出典記事が見つからなくなってしまいました。記載せずの転載で申し訳ありません)
最初の写真は外部システムです。見た目通りのサングラスに、目の代わりになるカメラがついており、バッテリーは肩から掛けています。「Antenna」は文字通りアンテナで、カメラがとらえた映像情報を、ワイヤレスで目に装着した本体へ送る働きと、本体が動くための電源を供給する働きをします。
さて、2枚目は実際に目に装着されるシステムの写真です。目にどのように装着されるか分かりにくいですが、リングがそのまま目の玉に鉢巻きをしたようにぐるっとまきついているイメージです。さらに、内側に伸びる「一反もめん」のようなものは、目の壁を貫き中に入って、頭の部分が目の内部の壁にぴったり貼りつく感じです。実際にはこの頭の部分は「網膜」の下に設置しますので、リングが目の外に貼りついていて(黒い部分はアンテナへの送受信部分)、「一反もめん」はそこから繋がって1枚薄い膜を残して目の壁の内側にすべりこませるような形になります。
「こんなものが目についていて痛くないの?」→痛くはないかもしれませんが異物感は相当なものでしょう。
「目に穴開けたままにして大丈夫なの?」→あまり大丈夫ではありません。それゆえに、前回私が指摘したように、かなり重篤な副作用が高い確率で出てしまうのです。
「一反もめん」の頭には小さな電極が6×10個の長方形に並んでいて、各電極が網膜を刺激します。ではこのシステムでどれだけ見えるようになるかというと、理論的には長方形の中で60個並べた電球のオンオフで作れる形すべて、と言いたいところですが、実際にはそうはいきません。電極と網膜の神経との連絡、網膜から脳につながる経路など、複雑な要素が絡み合って、「やってみないとわからない」というのが実情です。そのため、同じ光を見せても、ある人には動かない1点の光に見え、またある人は流れ星のように見え、また他の人は三角や四角などの形に見え、ということが起こります。ただ、「失った光を取り戻した」という喜びは、みなさん共通のようです。
つたない説明で分かりにくかったかもしれませんが、現時点で「かなり無理がある」ことは何となく実感していただけましたでしょうか?しかし、医療の歴史を紐解けば、その進歩も「無理があるけど意味がある」ことからの積み重ねで日々発展してきたことがわかります。薬もしかり、検査もしかり、そして手術もしかりです。我々の世代では享受できなかったことも、私たちの子供の時代には実現しているかもしれません。
アメリカで最先端医療に携わっていた経験を生かし、今後もこれからの医療の発展のために、微力ながら寄与していきたいと思う今日この頃です。