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院長ブログ

動体視力

相変わらず大活躍の大谷翔平選手はもとより、今日本のスポーツは世界レベルになってこれまでになく盛り上がっていますね。バスケの八村塁選手や、車いすテニスの小田凱人選手、ボクシングの井上尚弥選手。バドミントン、卓球、最近ではバレーボールなど…

それらスポーツのトップアスリートはよく「動体視力が良い」と言われます。

眼科や健康診断で測定する視力は「静止視力」といいます。いわゆるCの字(ランドルト環といいます)の切れている方向が分かるかを調べます。

一方「動体視力」は動いている物体を視線を外さずに持続して識別する能力のことを言い、動いている指標が見えるか、を調べます。

一般の人が経験するとしたら、70歳以上で運転免許更新の前の高齢者講習のときです。その際に簡易的な動体視力検査が実施されます(実際の免許更新時には行いません)。

動体視力が低下すると、距離感覚が不良になり、日常的に運転に支障をきたす原因となります。動体視力は、一般的にピークとなる20歳前後には0.8程度あったものが徐々に衰え始め、40代からは急激に低下していきます。 平均的な70歳以上の人の動体視力は0.1前後まで低下しているという報告もあります。

「動体視力」には、DVA(横方向の動きを識別する能力) と KVA (前後方向の動きを識別する能力)の2種類があります。 車の運転で言えば、遊んでいる子供のボールが路地の横から飛び出してくるのを素早く認識するのがDVA動体視力、右折する時に、反対車線を前方から走ってくる車の距離感をつかむのがKVA動体視力にあたります。

この「動体視力」、測定できるのは、高齢者講習会以外では、おそらく一部のスポーツトレーニング施設のみです。実は当院も含めた一般の眼科で測ることはありません。私は眼科医になって27年経ちますが、これまで「動体視力」について習ったことも、学んだこともありませんでした。様々な眼科の教科書がありますが、おそらく「動体視力」についての記述はほとんどありません。

ではなぜ眼科や健康診断で「動体視力」を測らないのか?今回のブログを書くのに初めて調べてみてわかったのですが、どうも「動体視力」には世界共通の基準がないようなのです。各施設の測定装置独自の基準があり、その装置で測定した対象者の中では比較はできるものの、他施設で測定した値がどこの施設でも同等に評価ができるか、というと、実は難しいようなのです。

「静止視力」は、どこで測っても基準が同じですから、1.5は1.5です。ですから「○○選手の視力は1.5」とはいえるわけです。ところが「○○選手の動体視力は2.0」というのは、ある測定施設(機器)の値であって、世界共通で評価できるかというと必ずしも正確ではない値といえます。

目から入った視覚情報は、神経を通って脳で処理され、それが体の動きに反映されます。つまり、脳の情報処理能力が高くなければ、とっさの判断や反応は速くなりません。トップアスリートといわれる人の多くは、視覚情報の処理能力が高く、すなわち「動体視力」には目だけの機能ではなく、反射神経や脳の機能も関わってくるため、評価の基準を設けるのが難しいのではないかと思います。

あんなに早くて変化する球を捉えるのですから、トップアスリートの「動体視力」が良いのは、疑いようがありません。また、動体視力はトレーニング次第で鍛えられると言われています。きっと大谷翔平選手も、人知れずトレーニングをしていることでしょう。

私は見ていて「凄いなぁ!」「驚異的!」「神がかっている!」と、数値では正確に表せなくても、「動体視力」がスポーツを楽しむ際のネタの一つになれば良いのではないかと思っています。

最後に、動体視力を鍛えるためのアプリをご紹介しておきましょう。我こそは!と思われる方は、是非挑戦してみてください。