今日は七夕。
昨年は早くも7月6日に梅雨明けしたそうですが、今年は例年通り梅雨の真っただ中。この時期に、果たして織姫と彦星はいったいいつ会えるんだろうと、子供の頃からずっと理不尽に感じておりました。
さて、「ミクロコスモス」という言葉をご存知でしょうか?訳すと「小宇宙」ですね。「驚異の小宇宙 人体」というNHKの番組がかつてありましたが、「小さなものでも、その中の仕組みがまるで宇宙のように複雑かつ壮大なもの」と私は解釈しています。
目の中の営みは、まさに「ミクロコスモス」。小さな小さな体の一部分なのに、外部からの情報の約70%を一手に引き受けていて、なおかつその情報処理の仕組みといったら複雑かつ壮大です。すべての臓器の中で唯一無二の透明性を保ち、光の強さ、色を鮮明にとらえ、それを微小な電気信号に変換し、いくつもの種類の細胞を介して脳に伝える精巧な受像機。それにはキャノ〇の最高級一眼レフも、パナ〇ニックの最新4Kテレビも遠く及びません。
その精巧さに比べると、私も研究にたずさわっていた「人工眼(人工網膜)」(クリックで記事1へ)(クリックで記事2へ)などは名ばかり?で、その機能の差にがっかりすることしばしでした。世界の優れた研究者が日夜研究を重ねて作り上げたものでも、実際の目の機能には足元にも及ばないものでした。
光、色、形のすべてを漏らすことなくとらえる小さな臓器、眼球。思い起こせば私が眼科医になったのも、その素晴らしさに魅了されたからでもありました。
さて、昔の少女漫画などでは大きな黒目の中にキラキラした星がいくつも描かれていたものですが、実際に目の中に星ができることがあるんです。
「星状硝子体症(せいじょうしょうしたいしょう)」
目の内部空間のほとんどを占めるのが、卵の白身のような透明でドロッとした液体で、これを硝子体(しょうしたい)と呼びます。ものを見るときに光が通る部分ですから、当然透明でないといけません。そこに、小さな白い砂粒のようなものが、数個~無数に浮いている状態です。目の内部は真っ暗ですから、そこに光を当てると、光った粒があたかも暗黒の宇宙にきらめく満天の星空のように見えるのです。粒の成分はカルシウムで、病気ではなく自然発生的にできると考えられています。
残念ながら、みさなんがそれを目にすることはありませんし、それどころか、ご本人でさえも気づくことはほとんどありません。これを見ることができるのは、眼科の検査機器を使って目の内部を照らした時に限られますので、目の中の星空を眺められるのは眼科医の特権でもあります。以前ご紹介した「クリスマスツリー白内障」(クリックで記事へ)にも似ていますね。
天の川の見えない七夕には、目の中の星空に思いをはせて、短冊に願い事を書いてみるのもよいかもしれません。