当院ではこれまで、目のご不自由な方も楽しめる映画鑑賞会「ユニバーサル・クリニックシアター」を2回、開催いたしました。
第1回→「ユニバーサル・クリニックシアター開催しました!」https://www.k-eye.jp/blogs/2023/03/06/post-1368/
第2回→「時をもどそう…」https://www.k-eye.jp/blogs/2024/03/29/post-1571/
ご報告が遅くなりましたが、先日10月5日の土曜日に、その第3回目を開催いたしました。
今回の映画は、なんとミュージカルで「雨に唄えば」。主題歌は誰でも知っている、古典であり名作です。
この映画には私も少なからず思い入れがあり、まだ10代だった若い頃初めて映画館で観たときに、主演のジーン・ケリーと名脇役のドナルド・オコナーのタップダンスがあまりにも楽しそうで、「自分もこんな風に踊れたら…」と憧れて、タップダンス教室に4年間も通いました(笑)。リズム感が悪く!結局ものにはなりませんでしたが、私の人生に少なからず影響を与えた映画の1本です。
今回この映画を選んだのは、この映画が大好きだからもありますが、楽しい歌や踊りのシーンを、実際に目の不自由な方にも楽しんでいただけるような音声解説は果たしてどのようにされているのか、私も大変興味があったからです。実際に音声解説を制作し、今回の上映でもご協力いただきましたシネマチュプキ・タバタの支配人、平塚千穂子さんによると、なかなかのチャレンジだったそうです。
今回の参加者は、前回の5名から倍以上に増えて11名でした。これまでは当院におかかりの患者様限定でしたが、今回は同じフロアにある戸塚区の区民活動センターにお声がけしたところ、いくつかのコミュニティをご紹介いただき、参加者の輪が広がりました。
その中でも、私たちの活動を知った眼科医の先生からお声がけいただき、嬉しいことに今回参加していただくことになりました。横須賀で開業され、視覚障害者の専門外来などロービジョンケアに幅広くご活躍をされている先生で、その繋がりで4名のお仲間と、ご友人で音声ガイド制作に携わっておられる方にもお越しいただきました。
土曜午前の診療が終わり、スタッフ全員の協力のもと検査室の機材を移動させてプロジェクターを設置し、参加者のみなさんをお迎えして上映が始まりました。
今回の上映では、スピーカーからはオリジナルの英語版の音声、そこにイヤホンガイドの音声で、セリフの翻訳と状況の解説がうまく織り交ぜられて聞こえてくるというスタイルです。
実際のところどうだったのかは、私が解説するより今回の参加者様のお声が参考になると思います。
「ミュージカルの音声ガイドの作品は初めて見ましたが、分かりやすく解説してくれていました」「音声解説はさすがだと思いました。本編か解説か、区別せずに聞けました」「歌とダンスを解説するのは難しいと感じた。例えば「回転する」といっても、その場で回転するのか移動しながらなのかがイメージできなかった」「英語の音声と日本語の解説は、日本語吹き替えよりも分かりやすかった」「競馬の実況中継のようなダンスの解説はすごいと思った」「ミュージカルは2回目でしたが、すごく楽しめました。やっぱり洋画はいいですね」などなど…
参加者様のこれまでのご経験や障害の程度によって、感じ方も様々なようです。以前平塚さんもおっしゃっておられましたが、ユニバーサルシアターでは、健常者と全く同じように楽しむことを目標にするのではなく、その人それぞれの楽しみ方で楽しんでいただけたらよいのかな、と感じる良い機会でした。
今回参加された眼科の先生にも「スタッフ一丸となって取り組んでおられる姿に感動しました」とご評価いただき、とても励みになりました。そしてこのつながりを通じて、ユニバーサルシアターの取り組みだけでなく、他にも当院や私ができるロービジョンケアを、より広げていくきっかけとなりそうです。