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院長ブログ

「舌下免疫療法」体験記1

10月より当院で開始いたしましたスギ花粉症に対する新しい根治治療「舌下免疫療法(クリックで詳細へ)」ですが、これまで8名の方が希望され、治療を開始いたしました。

さて、私も重度の花粉症で、この療法が開始されたら自分も試してみるつもりだとかねてから予告しておりましたように、私もその8名に加わりました。開始して1か月経ちましたので、患者様の経過と、私自身の体験記をご報告いたします。

舌下免疫療法薬「シダトレン」の治療を受けるに当たって大きな問題となる点は2つ、「副作用」と「長期間継続すること」です。

「副作用」は同ブログ“当院で「舌下免疫療法」を受けていただくにあたって(→クリックでリンク)でもお知らせしているように、命に関わる「アナフィラキシーショック」を起こす可能性が、ごくわずかながらにあるからです。また、軽い花粉症症状(くしゃみ、鼻水、目のかゆみ)や薬が接する口の中の粘膜の腫れ、かゆみは高い確率で起きることが知られています。

私の場合は、やはり副作用は出ました。始めてからしばらくの間は、口の中が何となく腫れているような、すっきりしない感じがありましたが、がまんできないことはなく、もちろん食べること、飲むこと、しゃべることに関してまったく影響はありませんでした。また、花粉症シーズンの走りによく出る症状なのですが、手がかさかさになったり、お腹が緩くなる症状も出ました。

この治療は、「スギ花粉に体を慣らす」のが目的ですから、むしろ軽い副作用が出ている方が「体が薬に反応している=効いてる?」という実感が持てて、むしろ継続するのに励みになります。

治療を開始された患者様では、口の中の違和感以外に、耳の中がかゆくなる、鼻がムズムズするなどの症状が出ている方もいましたが、思いのほか副作用が出ている方は少ない、という印象です。もちろん、アナフィラキシーショックやそれに準ずるような重篤な副作用が出ている方はいませんでした。

「シダトレン」のヨーロッパでの使用例、また国内での治験で、アナフィラキシーショックが起きる確率は「1億回に1回」といいますから、一般に広く使われている消炎鎮痛剤や抗生剤の内服で起こりうる激烈な副作用「スティーブンス・ジョンソン症候群」や「中毒性皮膚壊死症」などに比べても、ずっと少ないようです。
「スティーブンス・ジョンソン症候群」「中毒性皮膚壊死症」についてはこちら→クリックでリンク

ただ、来春の花粉が飛散する時期になると、体の薬に対する反応も変わってくるようで、この時期はより副作用が出やすくなるとのことですから、引き続き注意が必要です。
次に「長期間継続すること」に関してですが、これは最初の2週間が肝心のようです。

最初の1週間は、まず習慣付いていないので毎日忘れそうになるのを寝る前に思い出してあわてて内服することしばしば。専用のボトルに入った薬を1日目と2日目は1プッシュ、3日目と4日目は2プッシュ、5日目3プッシュ・・・と少しずつ増やしていくのですが、「今日は何回だったかなぁ…」と意外と忘れがちです。

そんな時に役立つのが薬を処方されるときにお渡ししている小冊子で、中はカレンダーになっており、日誌のように今日は何日目で何回プッシュで昨日までちゃんと飲んでいるかを自分で記入していくことができます。また、今はもっと便利なものがあり、スマートフォンで使える「舌下療法」専用のアプリがあり、日誌がつけられる以外に、決まった時間にセットしておくとアラームが鳴って飲み忘れないようにすることができたり、春には毎日の花粉飛散状況をお知らせしてくれます。

また、2週間目はさらに濃いお薬にボトルを変更し同じように使うのですが、私の場合そのタイミングで2泊3日の旅行が入ってしまい、苦労しました。まず、生活リズムが変わるのでつい忘れがちになります。また、この薬シダトレンは「要冷蔵」ですので、旅行中の持ち歩きでも常に「冷蔵」しておかなければいけません。そのため、日中は保冷剤を添えて持ち歩き、宿に着くとすぐに冷蔵庫に入れて、保冷剤も冷凍庫で再冷却(客室にない場合は宿の厨房の冷凍庫をお借りしなければいけません)してまた翌朝から使う、の繰り返しでした。2日目などは宿の冷蔵庫にあやうくシダトレンを忘れて帰りそうになり、チェックアウトしてからあわてて取りに戻る失敗もいたしました。

実際に鳥居薬品に問い合わせてみると、最初の1週間使うボトルは25℃(常温)で3か月、2週目のボトルと3週目以降使う使い切りパックは同温度で1週間は品質保持が可能とのことでした。そのため、そこまで厳密に「要冷蔵」を守らなくても、効果が落ちることはなさそうです。ただし、日中に車内に放置したり、直射日光のあたるところで25℃以上になってしまう場合はその限りではありません。

治療を開始された患者様で、今度カナダに出張に行く機会がある方がおられましたので、くれぐれもセキュリティでシダトレンを没収されないようにとお話しいたしました。昨今の厳しい機内持ち込み基準で大丈夫だったか、お帰りになったら是非お聞きしたいと思っております。

3週目に入ると、薬の形態が変わり、1日1パック使い切りタイプになります。そのころには常に同じ時間に服用する習慣もついています。服用前後2時間は、激しい運動、入浴、飲酒ができませんので、夜に服用するのはスケジュール的になかなか難しく、私はもっぱら起床時に服用しています。また、2週に1度薬の追加処方をしてもらうため、その時までに使い切るように消費することが、忘れずに服用する良い目標にもなっています。

患者様も何人か2回目、3回目の処方のために受診されていますが、みなさん毎日キッチリ服用しておられるようです。考えてみれば、自覚症状がない病気でも長期間薬を使い続けなければならない病気は、高血圧や糖尿病の内服や、緑内障の点眼などたくさんあります。ヨーロッパで3年後の脱落率が高かったからといって、日本でもそうとは限りません。「3年間継続するために強い意志を持って臨む必要がある」という私の考えは杞憂で、むしろ几帳面な方の多い日本人向きの治療法なのかもしれません。

以上、開始してから1か月半が経ちました「舌下免疫療法」のお薬「シダトレン」の使用感について、これまでの私の経験と患者様のご様子をまとめてみました。これから始めようとお考えの方の参考になりましたら幸いです。この「体験記」は、続報も随時掲載していく予定です。これからも引き続きお読みください。

・「舌下免疫療法」体験記2→(クリックでリンク)

なお、この私のブログでの舌下免疫療法の体験記は、あくまで私個人の感想で、すべての方に同様に効果があるものではないことをお断りしておきます。