電話をかける

045-392-5263

東戸塚 眼科 片桐眼科クリニック|東戸塚駅 西口より徒歩1分 モレラ東戸塚3階

TEL.045-392-5263

院長ブログ

朗読劇

先日、「朗読劇」を観てまいりました。

場所は西伊豆の土肥(とい)。金山(きんざん)があったことで知られる温泉地です。かつて西伊豆は交通の便が悪く、下田に住んでいた私でさえなかなか足を踏み入れない地域でしたが、今は第2東名や伊豆縦貫道などのおかげで、アクセスも便利になりました。

「菜の花舞台」といい、これまで20年以上毎年、休耕田の菜の花畑に舞台を作り、そこで野外劇をしていたそうなのですが、コロナの影響で一昨年、昨年と中止になり、今年は形を変えて、廃校になった小学校の体育館の舞台を借り、今回は演劇ではなく「朗読劇」となったそうです。

主宰は、2時間ドラマなどでおなじみの名優、橋爪功さん。橋爪さん率いる演劇集団「円(えん)」の舞台俳優さんのお1人が、我が家の子供が小学生の頃、私の妻とママ友で、かねてからお誘いを受けていたのですが、やっと観に行くことができました。

演劇の舞台は何度も見たことはありましたが「朗読劇」は初めてでした。どのような展開になるのか、何もない簡素な舞台を見つめながら、始まるをの楽しみにしていました。

そこに俳優さんが登場しました。知り合いのママ友さんです。朗読なので、台本を手にしています。立ったまま、かわいい、張りのある声で、新見南吉の童話を朗読されました。シンプルに、想像が広がる世界がまるで絵本のようです。

代わって次の俳優さんが登場しました。ハイキングに来た男性が、色々な人に道案内されながら、行けども行けども目的地にたどり着かない、怖い怖いお話。小松左京のショートショートです。登場人物やナレーションをその俳優さんお1人が、声色、しぐさ、表情を変えながら演じ分けていきます。実際に暗ーい山道に自分も取り残されたような、孤独感さえ感じました。

もう一度ママ友さんのかわいい童話を挟んで、別の俳優さんが出てきました。次は星新一のSFショートショートです。謎の円盤から降り立った宇宙人?を相手に、恥ずかしく立ち回る地球人の滑稽さ、星新一ならではの痛快などんでん返しの結末…迫真の朗読に、大いに笑わせていただきました。

そして御大、橋爪功さんの登場です。お題は、向田邦子の「かわうそ」。登場人物の一人と思しき、浴衣姿です。登場人物の夫婦は、ちょうど自分たちと同じ世代。橋爪さん独特の朴訥とした語り口調ですが、会話の機微、悲哀、そして健康問題など、一つ一つが胸に迫り、いつしか自分のマスクの上に大粒の涙をポロポロ落としていました。

大音響で大スクリーンに映した映画も私は大好きですが、今回は「生の演技」の迫力にやられてしまいました。舞台に登場するのはたった一人。時々効果音が入る以外は、背景もなく照明も普通です。言葉の力って、凄い!と思いました。しかも小松左京、星新一は、私が中学生のときにほぼ全巻読んでいるほど心酔していた作家さん。それをこんな素晴らしい朗読劇で聴けたことを、本当にうれしく思いました。(題材の選定は橋爪さんの奥様がされているそうです)

舞台が終わって、ママ友さんとお話しする機会がありました。今日の大感動をお伝えし、話の流れで私が企画しているユニバーサルクリニックシアター(「見えなくても、映画を楽しむ方法」 「ついに来た!(クリニックシアターの実現を目指して)」 「続・見えなくても映画を楽しむ方法」 それぞれクリックでリンク)のことをお話しすると大変興味を持ってくださり、朗読も視覚障害のある方に楽しんでもらうのに良いのでは、というご提案をいただきました。なるほど、その通りですね。何だか思わぬところでつながりました。またそこから何か新しいことが生まれる予感です…。