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院長ブログ

涙に関する悲しいエピソード (院長ブログ・アーカイブ)

このブログは2010年11月2日の開院1周年の日に始めました。開院10周年に遅れること1年、もうすぐブログも10周年です。

最近、「院長のブログ読んでますよ!」「いつも楽しみにしています」とお声がけいただくことが多くなりました。おそらく当院の公式LINEのお知らせで、登録されている1000人以上の方に読まれるようになったからだと思います。みなさん、私の拙い文章を、いつもお読みいただきましてありがとうございます。

これまで書き貯めた記事は80余りと、10年続けていたにしてはあまり多くありません。元々別のブログ専用ページに載せていたのを途中でホームページにお引越しをした際に、医療関係以外の内容を削除したり、しばらくお休みしていた時期があったりしたからですが、今となってはなかなか過去の記事を読まれることはありません。

ブログ10周年を機に、過去にアップした、とても印象的な出来事を書いた記事を、アーカイブとして今後も時々再掲載していこうと思います。

今回は2013年11月13日の記事からです。

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「涙に関する悲しいエピソード」

今日、定期的においで下さる80歳の男性の患者様(Tさん)が、いつも通り受診されました。

「先生、涙が出ちゃってねぇ。涙が止まる薬、出してもらえませんか?」

私は、よくある老人性の流涙症(目頭にある涙の抜け道がつまって、行き場を失った涙が下まぶたにたまる現象)かと思い、
「では、診てみましょう」と、いつも通り診察を始めようとしたところ、

「昨日、妻が亡くなりましてね」

私は、とっさに二の句が継げませんでした。いつもお元気で、にこにことされている方でしたが、言われてみれば最近元気がないのを、見抜けなかった私がうかつでした。

奥様が亡くなられた翌日に受診にいらしたのは、闘病の末の覚悟ができておられたのでしょうか、寂しさを軽い冗談で紛らわせるためのお言葉だったのでしょうか、細かい事情はお聞きできませんでしたが、そのお気持ちを察すると切なく、思わず私も涙ぐんでしまいました。

一通り診察が終わり、

「心からお悔やみ申し上げます。そんなときは、どうぞ大いに涙をながしてください、Tさん」と言葉をかけることが私のできる精一杯でした。

悲しい時、つらい時に涙を流すとすっきりする事があります。科学的な根拠はありませんが、涙には嫌なこと、つらいこと、悲しいことを洗い流してくれる不思議な力が確かにあります。

私がかけた言葉が適切だったかは自信がありませんが、涙を流し、時間が流れることで、Tさんの悲しみが少しでも早く癒えていくことを願ってやみません。

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今読んでも、思わず涙ぐんでしまいます。

そのTさんですが、2016年3月の受診を最後に、当院にはお見えにならなくなりました。

ご家族の方もいらしていませんので、消息は残念ながら分かりませんが、ご存命でしたら御年87歳。もちろん元気でおられることを願っていますが、(不謹慎とのお叱りを承知で)もしそうでなかったとしても、素敵な奥様と再会されて、きっと仲睦まじくされているに違いない、と思いを馳せるこの頃です。