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院長ブログ

網膜に画像を投影するメガネ

前回の「触れて時間を確認する腕時計」に続いて、今回も特別なデバイスをご紹介します。

私がよく観るテレビ番組の一つに「がっちりマンデー」(「マンデー」なのになぜか日曜朝7:30~TBSで放送)があります。最近注目の企業やお店を取り上げる情報バラエティ番組ですが、有名企業の裏側から、名前は知らなくても非常に興味深い取り組みをしている小さな会社などまで紹介され、その会社の経営者の考えなどは零細クリニックの経営者の端くれとして私も学ぶことも多く、気軽に、短い時間で見られるので、毎週リアルタイムか録画をして観ています。

先日「僕たち上場しました2021」という特集回で、川崎市にあるベンチャー企業「QDレーザ」という会社が紹介されていました。その会社が開発したのが、今回紹介する「網膜に直接レーザーで画像を投影するメガネ」です。

「レティッサ・ディスプレイ」という商品で、動画などをレーザーで直接網膜に届けるような仕組みになっています。(詳細はQDレーザのHPをご覧ください→こちらからリンク

これまでも「ウェアラブル・デバイス」と称して、メガネ型の端末はありましたが、それは「メガネに映し出された画像を目で見る」スタイルでした。「レティッサ・ディスプレイ」のすごいところは、画像をレーザー光に変換し、直接網膜に照射する方式だということです。

実は私たち眼科医は、同じレーザーを治療に使っています。それは必要があって網膜の一部を「焼く」治療です。例えば網膜に穴が開く「網膜裂孔」は、そのままにしておくとはがれて「網膜剥離」になってしまいますので、それを防ぐのに穴の周りの網膜をレーザーで「 焼いて」接着させます(イメージとしては金属を溶接する感じです)。

イラストはレーザー治療のイメージ図、写真は実際の治療後ですが、この写真で、白くなっているスポット1つ1つがレーザーで網膜を焼いた痕です。1つの直径は0.2mm程度で、時間が経つと白いスポットはこげ茶色になり、その時点で接着が完成します。

この治療をするときに大切なのは、レーザーの光の強度の調節です。弱ければ効果が出ませんし、強すぎると焼けすぎて必要以上のダメージを与えてしまいます。スポットの大きさ、光の強さ、照射する時間の長さなど、眼科医の腕の見せ所です。

「レティッサ・ディスプレイ」では、網膜にダメージを与えない強さで、画像がしっかり投影されるようにレーザーを調節しているとのこと。その検証では当然眼科医も関わっているようです。

今は保存された動画を投影するだけのようですが、近いうちにカメラで撮った画像をリアルタイムで投影できるデバイスができると番組で紹介されていました。近視の強い芸人さんが試作品を試していましたが、「メガネよりもよく見える!」と大騒ぎ?していました。しかもズーム機能も付いているようですので、色々な場面での活躍が期待できそうです。まるで近未来のSF映画のような世界が、現実になりつつあります。

この「レティッサ・ディスプレイ」、実物を試すことができるメガネ店があるようなので横浜にある対象店に問い合わせしたのですが、ちょうど担当者が異動になってしまって今はお試しができないとのことで、残念でした。都内にもいくつか対象店があるようなので、オリンピックが終わって落ち着いたころ、行って自ら体験してみようと思います。そしてその様子を、改めてこのブログでご報告いたします。