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院長ブログ

視覚障害と音楽家

スティービー・ワンダーは、私の最も好きなミュージシャンの一人です。私が初めて買った外国人アーチストのアルバムは、彼の「Hotter than July」でした。その中の「Happy Birthday」は今でもよくかかる名曲です。

ご存知の通り、彼は重度の視覚障害者です。未熟児で生まれ、保育器の酸素濃度の調節がうまくいかなかったため、未熟児網膜症により重度の視覚障害(全盲ではないようです)となりました。当然楽譜も読めない訳ですが、ミュージシャンとしてその才能をいかんなく発揮し、グラミー賞22部門受賞は、男性ソロシンガーとしては最多だそうです。

その他にも、視覚障害をもつミュージシャンとして、R&Bの大御所レイ・チャールズや、日本ではピアニストの辻井伸行さんなどが有名ですね。

歴史を紐解くと、平安時代~室町時代は琵琶法師が活躍しました。特に戦国時代にはご存知「平家物語」の弾き語りの需要が高まったからです。江戸時代には、視覚障害者は幕府からしっかりした身分保障を受けており、「当道座(とうどうざ)」という集団で職業訓練をうけることができ、視覚障害者の代表的な職業「鍼灸・マッサージ・音楽」を身に着けていったそうです。時代劇の「座頭市」も、マッサージ(あんま)を職業としていましたね。視覚に障害があるゆえの、鋭い触覚や聴覚を生かしていたのでしょう。残念ながら明治維新でその身分保障は廃止されてしまいました。

また、調べてみて驚いたのですが、クラシック界の父と母と呼ばれる(日本だけ?諸説あります)バッハとヘンデルですが、同年1685年に生まれ同時代に生きて、晩年には2人とも同じ頃にイギリスのジョン・テイラーという眼科医に白内障手術を受けて、いずれも失敗し、失明しているそうです。当時の白内障手術は、眼内レンズもなく、濁った水晶体を針を使って目の内部に落下させるという、今考えるとまともな麻酔もない時代に何と恐ろしい、と思いますが、それだけの危険を冒してでも手術をするほど深刻だったということですね。日帰りで15分もかからない手術で見えるようになる今の時代に生きている私たちは幸せですね。

視覚に障害のある音楽家の方々は、そう多くはありません。華やかな活躍をされている方も、裏では人知れず大変なご苦労をなさっていることと思います。多様性が認められるようになった昨今、才能のある音楽家が、視覚や聴覚に障害を持っていても活躍できるようなサポートが一般的になることを願ってやみません。