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院長ブログ

今回のユニバーサル・クリニックシアターは、社会派…

当院ではこれまで、目のご不自由な方も楽しめる映画鑑賞会「ユニバーサル・クリニックシアター」を3回、開催いたしました。

第1回→「ユニバーサル・クリニックシアター開催しました!」https://www.k-eye.jp/blogs/2023/03/06/post-1368/

第2回→「時をもどそう…」https://www.k-eye.jp/blogs/2024/03/29/post-1571/

第3回→「ユニバーサル・クリニックシアター第3弾開催!」https://www.k-eye.jp/blogs/2024/11/29/post-1685/

先日、4月19日の土曜日に、その第4回目を開催いたしました。

今回の上映作品は「私は憎まない」というドキュメンタリー映画。

ガザ地区出身のパレスチナ人医師イゼルディン・アブラエーシュ博士のドキュメンタリー映画です。彼はパレスチナ人として初めてイスラエルの病院で医師として働き、産婦人科医としてイスラエル人とパレスチナ人の両方の出産に携わり、命の平等を体現していました。ところが2009年のある日、ガザの自宅がイスラエル軍の戦車の砲撃に遭い、彼の目の前で3人の娘と姪を殺されてしまいます。無残な姿の娘たち…その悲劇を嘆く電話での彼の音声の一部始終が、イスラエルのTVニュースで生中継で放映される…。

ところが彼は「憎しみで戦争や虐殺は解決しない」と、発砲した兵士やイスラエル軍の上層部を憎むのではなく、あくまでもパレスチナとイスラエルの橋渡し役となるために共存の可能性を信じ、憎しみの連鎖を断ち切ることこそが真の平和の道だと訴え、過ちを認め謝罪するよう、イスラエルの裁判所に訴え出る、という姿を追っています。

その精神は世界中でたたえられ、中東のガンジー、マンデラ、キング牧師ともいわれ、5回もノーベル平和賞候補(まだ受賞はしていない)になっています。

これまでの上映作品はエンターテインメント的なものばかりでしたので、今回は思い切り社会派な内容です。

上映後、参加者の方へアンケートをお願いしているのですが、今回は設備や環境についての感想よりも、内容についての感想が多く、皆様平和についてとても考えさせられているご様子でした。

「1日でも早く停戦して平和な未来で世界、みんな平和でありたい。戦争で1つも良いものが生まれないと思うのでどれだけの犠牲を前にこれを続けている意味があるのか私にはわからない。」「私はニュースでイスラエル、ガザが大変なことになっているのを知りました。表面的なことはわかっているけどガザの人たちを応援、支援しなきゃと思っています。日本も平和ではありません。貧困、格差が大きいからやっぱり教育、指導者が大事だと思います。」「題名を聞いていたので少し調べて興味深い内容だったので楽しみにしていました。重たい内容でしたがこういう映画ってあまり解説もいれてもらえないしTVでもあまりやらない気がするので興味深く観させていただきました。」「TVでやってても字幕は全然見えないがこういう音声ガイダンスだったら楽しめるんだなと思いました。普通映画しか観たことがなかったから今回のドキュメンタリーをこんなふうに楽しめるんだなと思いました。」「一度字幕スーパーだけで観ていたため今回の音声ガイダンスがどのように解説、吹き替えするのか興味があった。30人くらいが関わっていたと聞いてこういうものを作るのは大変な作業なんだと感じた。こういう機会はとても良いですね。(お付き添いのご家族)」などなど…

今回は夢の世界ではなく、現実に今この世の中で起きていることに気付き、考える機会を持っていただくことができたのではないかと、この作品の上映会ができたことを嬉しく思います。

私が尊敬してやまない中村哲医師(ブログ「尊敬する人」→https://www.k-eye.jp/blogs/2023/01/15/post-1323/と同じく、アブラエーシュ医師も心から尊敬できる方のお一人です。その活動と精神がより世界に広まり、それが停戦、和平につながるなら、ぜひノーベル平和賞も受賞していただきたいと思います。

最後に、映画の中で出てきた、アブラエーシュ医師や、現場にいて大けがを負うも辛うじて生きながらえた娘さんなど出演者の、心に刺さる印象的な言葉をご紹介したいと思います。

「パレスチナ人の尊厳と、イスラエル人の尊厳は平等」

「難民とは、歴史も尊厳も家もあった人のことだ。そして突然人間の手によってすべてを奪われ、尊厳を剥ぎ取られた人なのだ」

「ユダヤ教徒とイスラム教徒の赤ん坊の違い?みんな同じ新しい命だ」

「夢と意欲にあふれる彼の目を見て、真の産婦人科医と思った」(イスラエルの病院の産婦人科教授)

「兄はどんな経済状態の患者も診ます。困窮者からは診察代を取りません。生活が苦しい難民たちを助けることが、兄の信念なのです」(アブラーエシュ医師の実弟)

「誰も憎しみを抱いて生まれてこない。憎しみに触れることで育つものなのだ。憎しみを防ぐには、憎むきっかけを知ることだ。貧困、暴力、人種差別、偏見、優位性、搾取、植民地化、占領…」

「私や他の人が、あれほどの悲劇を経験したら、許しを請われても許せないでしょう」(アブラーエシュ医師を取材していたイスラエルTVキャスター)

「証明したのだ。私はシャダ・アブラーエシュ。憎しみ、復讐、怒りの解毒剤は、教育ですと」(大けがを負いながらも、猛勉強で高校を卒業し大学に合格した娘を称えて)

「彼はとても純真でした。イスラエルが非を認め謝罪すると思ったのです。彼が会ってきたイスラエル人たちが、彼をよく理解し、尊重してきたからでしょう。非があれば謝るような人たちです」(人権派弁護士)

「私たちが闘っていることに腹が立つ。闘いを強いられることが異常です。被害者が正義を求めないといけない。その事実に怒っています」(裁判前の記者会見で「怒っていますか?」と記者から質問された娘シャダの回答)

「判事でなく、人間としてのあなた方に言います。ここへ来ることにしたのは、あなた方をまだ信じているから。そして真実と正義が勝つと。イスラエルとパレスチナが和解し、娘たちが最後の犠牲者となるなら、私は受け入れます」

「道徳心と勇気をもったリーダーが必要だ。リスクを恐れず、人間のあるべき姿と未来を見据える人々だ。権力にすがる人ではなく。そんな指導者は歴史が許さない。民衆も決して許さない」